久保渓さん
600株式会社の社員は現在約15名、キャッシュレス決済ができる無人コンビニ(自販機)をマンションやオフィスビルに提供する無人ストア事業と、自販機のDXに特化したAIを提供して自販機ビジネスをサポートするソリューション提供事業を行っています。
現代人にとって「時間」の重要性がどんどん増しているなと感じていて、人によって価値観は異なりますが、時間を効率的に使うことの大切さについては、多くの人に共通した認識だと思います。例えば、私の場合は現在子育て中なので、家族との時間を大切にしたいのですが、その時間を捻出するために、無駄な時間を効率的に削りパフォーマンスを上げたい。そういう社会の要望に貢献したいという思いから、弊社では「1分あればなんでもできる」をビジョンに掲げています。無人ストア事業は「必要な時に」「必要なものを」「すぐに」買える環境を提供するもので、これによりコンビニやスーパーまで往復する時間、商品を選ぶ時間などの無駄を減らし、時間をより大切なことのために効率よく使うことができます。
創業するとき、ちょうど妻が妊娠中でつわりがひどく、効率よく時間を使ってプライベートと仕事を両立させる必要がありました。そこで、プライベートでの飛び石的な効果を期待して、土日の他にもう1日、水曜休みを入れてみたのです。始めてみると仕事の面で非常に効率がいいことに気づきました。「月・火」「木・金」の二日単位に明確に分けられるため、いわば“締め切り効果”のようなものが作用して、パフォーマンスが上がったことを実感できました。メリハリのある働き方ができたのです。そのため、社員を採用してからもこれを正式に制度化し、今も続いている状況です。週休3日制は非常に反響が大きく、これをきっかけに求人に応募してくれた人も多いですし、会社や事業を認知してもらうきっかけになりました。
その中でパフォーマンスを最大化するための重要なポイントの一つが「意思決定」を明確にすること、つまり「何をするか」「何をしないか」「何が優先されるか」ということを、社員一人ひとりがしっかり意識するということです。そのため弊社では、すべての事柄に対して「意思決定者」と「承認者」を決めて仕事にあたっています。そうすることで、社員は自ずと事業価値を意識するようになり、例えば優先度の低い仕事に膨大なリソースを割くというような非効率な働き方を防ぐことができます。
この仕組みには、私が権限委譲をしやすくなり、私一人で意思決定をするよりスピーディに物事が進むというメリットもあります。その際には「手や目を離しても、心は離さない」ということを心がけ、私がどこまで関わるべきかを常に見直し、情報を共有して透明性を高めた上で、逐一私に相談することなく決定できる状態を維持できるようにしています。
介護など家族のために時間を費やしている人、社会人スポーツチームに所属してプレイしている人、仕事から離れて心身を休める時間にしている人もいます。副業をしている人も多く、プラスアルファの収入、本業とは別分野でのキャリアアップ・スキルアップなどその目的もさまざまです。日常生活のあらゆるところにビジネスの種がありますし、会社の外で培った力が循環して、なんらかの形で事業の成長のために還元されると期待しています。
どんな制度であれ、導入するにあたっては透明性が大切で、導入の目的や背景などを全社員にきちんと伝える必要があります。また、実効性のある制度として運用するためには柔軟性も欠かせません。弊社の場合、最初はできる限り柔軟な制度としておき、運用にあたって徐々に調整していきます。その過程で変更することになれば、理由をきちんと告知して納得してもらうようにしています。
もうひとつ重要なことは、制度というのは全員が守らなくてはならないということを、全社員に意識してもらうことです。もし悪用されたり、形骸化したりしたら、制度の意味がなくなってしまいます。これを避けるためには制度を悪用しようとする人が入らない仕組み、制度を守っている人が損をしない仕組みを作らなければなりません。
そのためにも弊社では「愛」「誠実さ」「責任感」「柔軟性」「仲間を助ける利他性」「局面を変える力」という6つのバリューを掲げ、これに見合う人に入社してもらっています。同時に、会社側もそのバリューに沿った振る舞いをする必要があります。そして、会社に関わる全ての人が協力的に、その制度を良いものとして成功させるために、整合性を保った状態で理想に向けて運用していくことがとても大切なのではないでしょうか。
何かを始めたら、ずっとそれを続けなければいけないということではありません。関わる全ての人が大切にして、一緒に維持していくために頑張れる、そんな制度が運用されるのが理想だと思うので、うまくいかなかったら止める選択肢もあっていいでしょう。全ての人が「守りたい」「推進していきたい」と思える制度ができて、それが事業成長の力になってくれたらいいなと思います。私もまだまだ経営者として未熟ではありますが、そういう制度をぜひ一緒に作っていきましょう。