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魅力ある職場づくりとは――
INTERVIEW02

新しい働き方で躍進するスタートアップ・NAVICUS武内一矢さんに聞く、「社員が仲よくなる社内制度」がエンゲージメントのカギ

武内一矢さん

「魅力ある職場づくり推進奨励金事業」では、従業員のエンゲージメント向上に向けた職場環境づくりに積極的に取り組む企業をサポートしています。従業員が働きがいを感じながら、働きやすい環境を整えるには、どのような働き方がいいのでしょうか。「リモートワークが基本」という新しい働き方を実践中の株式会社NAVICUSの武内一矢さんにお話を伺いました。
PROFILE武内一矢/株式会社NAVICUS代表取締役
早稲田大学卒業後、Q&AコミュニティサービスOKWAVEを運営する株式会社オウケイウェイヴに入社。TwitterなどSNSを活用した企画を担当。その後、株式会社ディー・エヌ・エー、ふるさと納税ポータルサイト大手「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンクなどを経て、2018年、株式会社 NAVICUSを起業。創業時は武内さん1人だった同社は2023年現在、社員約50人の企業に。

フルリモートでも仲のよい関係を作るためには

株式会社 NAVICUSは、ユニークな働き方をしているそうですが、どのような企業なのかご紹介ください。

NAVICUSは、2018年に私が1人で創業した企業で、事業は大きく2つあります。1つがSNSマーケティングの支援で、TwitterやInstagram、Facebook、最近ではTikTokやYouTubeなども使って、企業のプロモーション、公式アカウントの運用代行などを主に行っています。もう1つの事業が自治体向け、とりわけ「ふるさと納税」のプロモーション支援です。これは「寄付者にどのように情報を届けると魅力を感じていただけるのか」ということを日本各地の自治体に対してサービス支援として提供しています。

社員の働き方で特徴的な点は、基本的にフルリモート(全社員が在宅)で仕事をしていることです。本社は、東京・秋葉原にありますが、そこには1〜2名しか社員が常駐せず、北海道から沖縄まで全国に約50名の社員が点在して、オンラインで仕事を行っています。また、女性比率が高く、社員の約8割、管理職も約8割が女性で、育児をしながら働いている人もいて、20代から40代までさまざまなライフステージの社員がいるというのも大きな特徴だと思います。

フルリモートにすると、社員の仕事へのモチベーションやエンゲージメント(意欲や働きがい、定着率)に影響はありませんか。

リモートワークがうまくいくために重要なのは、何よりも「仲がいい」ということ。社内にどんな制度やツールがあっても仲の悪い上司・同僚とは話したくないと思うんです。いかに社員同士の関係が良好かが大事で、そのために、私たちの会社では自己開示の機会をたくさん作っています。

たとえば、私が独自に立ち上げた「75 Days Ago(セブンティファイブデイズアゴー)」というコーナーがあります。全社会議の最後に毎回、入社順で15分間、自分が入社の75日前にどこで何をしていたかを話すというコーナーです。前の職場で、次のキャリアをどうしようと悩んでいたというような話をしてもらって、なぜこの会社を選んだのか、何をやりたいと思っているのかを言語化してもらいます。
同じ目的で「ご当地飲み」というコーナーもやっています。これは日本各地にいる社員の1人が幹事になって、地元の特産品を5つピックアップし、その中から参加者が投票で選んだものを各自の自宅に送って、幹事の解説を聞きながら食べるというオンラインの飲み会です。相互理解や信頼関係づくりをするためには、こうした自己開示の機会が非常に大切だと思います。

対面での体験価値を積極的に作る

対面でのミーティングの機会を作るようなことはされていますか。

もちろん、私たちは対面でのコミュニケーションの大切さもわかっているので、リアルで会える機会もできるだけたくさん作るようにしています。リモートワークをしながらも、社員が仲よく働けるのは、対面でのコミュニケーションが円滑なことが成功のカギです。リモートワークは、あくまでも対面で培った関係性をオンラインに持ち込んでいる状態ですから、新年会や社員歓迎会など節目のイベントは対面であるべきだと思っています。

私たちの会社では、月3万円までワーケーション手当として交通費、宿泊費を会社が補助する制度があるのですが、これを活用してこれから始める企画に「ポップアップオフィス」があります。これはチーム単位で日本のどこかに集まって一緒に仕事をするという取り組みです。私たちの会社には全員が出社できるような大きなオフィスを持たない分、その費用をこうした活動に当てることができます。普段リモートワークで働いているチームで、リアルな体験価値を作るという活動ですね。たまに対面で会うと、前日もオンラインで話したばかりなのに、同窓会に来たような懐かしさがあって、それがいい関係作りに貢献しているのかなとも思います。

クライアントとの関係でも、やはり最初は対面で打ち合わせさせてほしいとお願いして、コロナ禍でも実際に現場に伺って話を聞いたり、関係先を見せていただいたりすることは多いですね。

「働きがい」をどうやって作るか

東京しごと財団の「魅力ある職場づくり推進奨励金」についてはどう思われますか。

NAVICUSでは、推奨されている10の取り組みのうち、フレックスタイム制、ワーケーション制度、社外副業・兼業制度、社内メンター制度、外部キャリアコンサルタント活用支援制度などはすでに導入済みですが、リスキリング・資格取得支援制度や選択式週休3日制などは、これから検討したいと思っています。私たちのようなスタートアップが社員のエンゲージメントを高めるために、こうした奨励金を活用しながら、働きやすい環境を作ることはいいことだと思います。

NAVICUSは、「働きがいのある会社」に認定されたとのことですが、これはどういう取り組みですか。

働く人へのアンケートの結果を基に世界約60カ国で「働きがいのある会社」を認定する専門組織があるのですが、そのライセンスを受けた日本企業から認定されました。NAVICUSはコロナ禍以前からリモートワーク主体の組織作りをし、フレックスタイム制度、ワーケーション制度など、社員それぞれが自分に合った最適な働き方を選択できる環境を整えてきました。先述のように、社員間のコミュニケーションをよりよくすることにも力を入れており、会社や仕事に対する率直な思いを日々共有しています。今回、この認定を受けたのは、「働きやすい環境づくり」から一歩進んで、働きがいを感じられる「能力を発揮できる環境」を作ることが目的です。

私たちは社内で、「ウィル(will)」「キャン(can)」「マスト(must)」という3つの軸で仕事を整理します。「ウィル(will)」は「自分自身のやりたいこと」、「キャン(can)」は「自分のできる得意なこと」、そして「マスト(must)」は「なすべきこと、会社が求めること」を意味します。「働きやすい」という時は多くの場合、マストの要素が少ないことを言っていると思います。でも、責任が少なくて楽な仕事は、必ずしも長く働いていく中で働きがいがある仕事ではないと思うんです。ウィル、キャン、マストのすべてが重なった仕事ができている状態こそが、本人にとって働きがいがあるということなのではないでしょうか。
NAVICUSでは、新しい仕事の相談をいただいた時は、まず社内公募をします。たとえば、あるアイドルグループのプロモーションの仕事がきた時、やりたい人が手をあげます。そこで、「じゃあ、やってください」だとちょっと浅いかなと。具体的にどういう頑張りができるかを企画書のような形で言語化してもらい、思いだけで言っているのではなく、ベースとしてどんな知識や能力があって、何ができるかを示してもらって初めて「それならやってもらおうか」となる。そこは任せる側の覚悟も必要で、本人はここまでは頑張れるだろう、足りない部分は会社として上司がサポートするよ、と。そういう流れで、本人のウィルとキャン、会社側のマストの部分を満足させるような体制を会社として作るようにしています。

今は、トップクラスのクライアントの仕事が受けられているので、売上的にもインパクトが出てきているし、社員のウィルだけを見て仕事を任せるというわけにはいきません。でも、そうした仕事が若い社員の学びにもなっていて、クライアント以上にエンドユーザーの方たちにもいい影響を与えていると思います。

最後に、武内さんが社員のエンゲージメントを高めるために大切にしていることを教えてください。

私たちの会社は「明日が楽しみになる居場所を作る」ということをビジョンに掲げています。収入や仕事内容よりも、「その仕事に自分の存在価値が感じられる」ことが人の幸福そのものだと考えています。ですから、社員が物理的につながるだけでなく、そのつながりがあることで明日の仕事も楽しみになれる、働きがいを感じられることが重要です。月曜日に職場に行くのが楽しみとか、週末のイベントが楽しみとか、そういう関係を築けるようにしていきたいです。そのために利用することが可能なワーケーション手当やその他の社内制度は、社員のエンゲージメントを高めることに大きく貢献していると思っています。

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